しゃべりにくい
「言葉がうまく話せない」「ろれつが回らない」「声は出るけれど、言葉にならない」など、しゃべりにくさを感じたことはありませんか? しゃべることは、私たちのコミュニケーションの基本であり、日常生活に深く関わっています。ここでは、しゃべりにくいと感じる原因や、対処法について詳しく解説します。
「しゃべりにくい」とは?
「しゃべりにくい」という症状は、大きく分けて2つのタイプがあります。
1.発声障害(はっせいしょうがい):声そのものが出にくい状態。声が小さかったり、かすれたり、出しにくかったりする。
2.言語障害(げんごしょうがい):声は出せるけれど、言葉がうまく作れない、言葉の意味を理解できない、または言葉がはっきりしない状態。
今回は、主に言語障害について解説します。
言葉が作られる仕組み
私たちが言葉を話すときには、様々な器官が協調して働いています。
1.声帯での音声生成: 肺から送られてくる空気が、喉頭にある声帯を振動させることで「声」という音を作り出します。
2.咽頭・口腔・鼻腔での調音: 声帯で作られた音は、咽頭、口腔(舌や唇)、鼻腔を通過する際に、形作られ、言葉として発せられます。
- 補足: 舌や唇、顎など、口周りの筋肉は、発音をスムーズに行うために重要です。
言語障害の主な原因
言葉がうまく話せない、言葉がはっきりしない場合、声帯以外の器官に異常がある可能性があります。言語障害の原因は多岐にわたります。
1.脳の障害
- 運動性構音障害(うんどうせいこうおんしょうがい):脳卒中(脳梗塞、脳出血など)や脳腫瘍、外傷などで、口や舌の筋肉を動かす神経が麻痺したり、機能が低下することで、ろれつが回らない、発音が不明瞭になるなどの症状が現れます。
- 補足: 構音とは、口や舌を使って音を正確に作り出す動作のことです。
- 失語症(しつごしょう):脳の言語中枢(言葉を理解したり、作ったりする部分)が損傷することで、言葉を理解することができなかったり、意味のある言葉を話すことができなくなる状態。脳卒中や頭部外傷などが原因で起こることがあります。
- 補足: 失語症には様々な種類があり、症状の出方も人それぞれです。
2.発達の問題
- 言語発達遅滞(げんごはったつちたい):言葉の発達が、年齢に比べて遅れている状態。原因は様々ですが、脳の発達の問題や、環境的な要因などが関わっていると考えられています。
- 脳性麻痺(のうせいまひ):出生時や出生直後の脳への損傷によって、運動機能や言語機能に障害が起こる病気。発音の不明瞭さや、言葉の発達の遅れなどの症状が現れます。
3.口や舌の構造的な問題
- 舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう):舌の裏側にある舌小帯というスジが短く、舌の動きが制限されてしまう状態。発音の不明瞭さや、舌をうまく動かせないなどの症状が現れます。
- 口蓋裂(こうがいれつ):口の中にある口蓋(上あご)が生まれつき裂けている状態。発音の不明瞭さ、鼻声、哺乳障害などの症状が現れます。
4.その他
- 口や舌の病気:
- がん: 口腔がんや舌がんなどによって、口や舌の形が変わったり、動きが悪くなったりすると、言葉が話しにくくなることがあります。
- 外傷: 事故や怪我などによって、口や舌に損傷を受けると、言葉が話しにくくなることがあります。
- 神経系の病気: パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経系の病気によって、口や舌の筋肉の動きが悪くなり、言葉が話しにくくなることがあります。
言語障害の症状
言語障害の症状は、原因によって様々ですが、主な症状として以下のようなものがあります。
- ろれつが回らない: 発音が不明瞭で、言葉が聞き取りにくい。
- 言葉を言い間違える: 言葉の音や意味を間違えてしまう。
- 言葉が出てこない: 言いたい言葉がすぐに出てこない。
- 話すスピードが遅い: 話すスピードがゆっくりになる。
- 文章を構成するのが難しい: 文章をうまく作ることができない。
- 言葉の意味を理解できない: 人が言っていることを理解するのが難しい。
言語障害の検査と診断
言語障害の原因を特定するために、専門医(耳鼻咽喉科医、言語聴覚士など)が以下のような検査を行います。
- 問診: いつから症状が出始めたか、どのような時に症状が出やすいか、他の症状を伴うかなどを詳しくお聞きします。
- 発音検査: 特定の音や言葉を発音してもらい、発音の正確さを評価します。
- 言語理解検査: 言葉を理解する能力を評価します。
- 構音検査: 口や舌の筋肉の動きを評価します。
- 嚥下機能検査: 食事を飲み込む機能を評価します。
- 脳の画像検査(CT・MRIなど): 脳の構造的な異常がないか確認します。
- 聴力検査: 聴力に問題がないか確認します。
言語障害の治療法
言語障害の治療法は、原因によって異なります。
1.脳の障害が原因の場合
- 運動性構音障害: 言語聴覚士によるリハビリテーションで、口や舌の筋肉を鍛えたり、発音の練習を行います。
- 失語症: 言語聴覚士によるリハビリテーションで、言葉の理解や表現能力の回復を目指します。
2.発達の問題が原因の場合
- 言語発達遅滞: 言語聴覚士による訓練や、必要に応じて療育などを行います。
- 脳性麻痺: 専門医や言語聴覚士によるリハビリテーションを行います。
3.口や舌の構造的な問題が原因の場合
- 舌小帯短縮症: 手術で舌小帯を切り離すことで、舌の動きを改善します。
- 口蓋裂: 手術で口蓋を修復します。
4.その他の原因の場合
- 口や舌の病気: 専門医による治療を行います。
- 神経系の病気: 専門医による治療を行います。
言語訓練(リハビリテーション)
言語訓練は、言語障害を持つ方のコミュニケーション能力を改善するためのリハビリテーションです。言語聴覚士が、個々の状態に合わせて、発音練習、言葉の理解や表現の練習などを行います。
日常生活での注意点
- ゆっくりと話す: 早口で話すと、聞き取りにくくなることがあるため、ゆっくりと話すように心がけましょう。
- はっきりと発音する: 言葉を一つ一つ、はっきりと発音するように心がけましょう。
- 相手の目を見て話す: 相手の目を見て話すことで、コミュニケーションがスムーズになります。
- 周囲の環境に配慮する: 静かな場所で話すように心がけましょう。
- 無理をしない: 話しにくいときは無理をせず、休息をとりましょう。
まとめ
「しゃべりにくい」と感じたら、自己判断せずに早めに専門医(耳鼻咽喉科医や言語聴覚士)に相談し、原因を特定し、適切な治療を受けるようにしましょう。
(お困りの際は、当院までご相談ください。クリニックではできることが限られておりますが、状況により、脳神経内科や訓練ができる大学病院をご紹介いたします。)