亜急性甲状腺炎
1.概要
亜急性甲状腺炎(あきゅうせいこうじょうせんえん)とは、ウイルス感染や免疫反応などがきっかけとなり、甲状腺に炎症が起こる疾患です。急性の激しい症状と、慢性のように長期化する症状の中間的な経過をたどることが多く、発熱や甲状腺の痛み、甲状腺ホルモンの異常な分泌がみられます。一般的には数週間から数カ月の経過で改善に向かうことが多いとされています。
2.症状
- 甲状腺部の痛み・腫れ:のどぼとけ付近に痛みや圧痛があり、触れると強い痛みを感じる
- 発熱・倦怠感:微熱から高熱までさまざまな熱型があり、全身的なだるさを伴うことがある
- 甲状腺機能の変動:
- 甲状腺ホルモンが一時的に過剰になり、動悸や発汗などの甲状腺機能亢進症状が出る場合がある
- その後、甲状腺ホルモンが減少して、倦怠感やむくみなどの甲状腺機能低下症状がみられることも
- 痛みの放散:痛みがあごや耳の方へ放散する場合がある
3.原因
- ウイルス感染:風邪などのウイルス感染が引き金となり、甲状腺組織が炎症を起こすと考えられている
- 免疫反応:ウイルスや自己免疫の異常により、甲状腺が一時的に破壊され、ホルモンが血中に流出する
- その他:詳細な原因は明らかになっていない部分も多く、遺伝的要因やストレスなども影響する可能性がある
4.診断
- 問診・視診・触診:甲状腺周辺の痛みや腫れの程度、発熱の有無などを確認
- 血液検査:炎症反応(CRP、赤沈など)や甲状腺ホルモン(T3、T4、TSH)の値を測定し、機能の変動を評価
- 甲状腺自己抗体の測定:自己免疫性疾患との鑑別を行う場合がある
- 画像検査(超音波など):甲状腺の大きさや血流、炎症の広がりを観察
- 放射性ヨウ素摂取率検査:亜急性甲状腺炎では、甲状腺が破壊されてホルモンが放出されるため、一時的に放射性ヨウ素の取り込みが低下する
5.治療
- 消炎鎮痛薬(NSAIDs):軽症の場合、炎症や痛みを抑えるために使用
- ステロイド薬:中等度以上の炎症や痛みが強い場合、ステロイドの内服で症状を速やかに改善
- 甲状腺機能異常への対応:
- 甲状腺機能亢進症状が強い場合は、β遮断薬などで動悸や振戦を緩和する
- 甲状腺機能低下症状が強い場合は、一時的に甲状腺ホルモン剤を補充する場合もある
- 経過観察:多くの場合、数週間から数カ月で自然に回復傾向を示すため、症状や血液検査の変化を見ながら治療を調整する
亜急性甲状腺炎は適切な治療と経過観察によって改善が期待できます。首の前の痛みや発熱、甲状腺ホルモンの異常が疑われる場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診して検査・治療を受けることが大切です。
