味覚障害
1.概要
味覚障害(みかくしょうがい)とは、食べ物の味がわからなくなる、味を感じにくくなる、あるいは何も食べていないのに変な味がするなど、味覚に異常が生じる状態を指します。亜鉛不足や薬剤、全身疾患、心因的要素など、さまざまな原因が関与するといわれています。
2.症状
- 味が薄く感じる・まったく感じない:塩味や甘味など特定の味だけがわからなくなることもある
- 異常な味覚:何も食べていないのに苦い・金属のような味がするなど
- 食欲低下:味覚の異常により食事がおいしく感じられず、食欲が減退する
3.原因
- 亜鉛不足:血清中の亜鉛量が不足すると、味蕾(みらい)の機能が低下しやすい
- 特発性(原因不明の亜鉛不足)
- 薬剤性(利尿剤や降圧剤などによる亜鉛の排泄増加)
- 感冒(風邪)後の体力低下
- 全身疾患(肝疾患、腎疾患など)
- 鉄欠乏性貧血:舌炎を伴うことがあり、味覚にも影響
- 口腔内トラブル:虫歯や口内炎による舌炎、舌苔(ぜったい)の付着など
- 神経・脳機能の低下:脳の感覚伝達異常や神経疾患
- 心因性要素:ストレスやうつ病などが原因で味覚が変化する場合もある
4.診断
- 電気味覚検査:電気刺激を舌に与え、味を感じるかを評価する
- 濾紙ディスク法:甘味、塩味、酸味、苦味など各濃度の味の溶液をしみこませたディスクを舌に当て、味覚の程度を調べる
- 血液検査:血清亜鉛濃度や貧血の有無を確認
- 口腔内診察:舌や歯、口内の状態を視診し、虫歯や炎症などがないかをチェック
5.治療
- 亜鉛不足への対応:亜鉛補充薬の処方や栄養指導(バランスの良い食事、亜鉛を多く含む食品の摂取)
- 原因薬剤の見直し:薬剤性が疑われる場合、医師と相談しながら薬の変更や減量を検討
- 全身疾患の治療:貧血や肝疾患、腎疾患などが原因の場合は、それぞれの疾患を治療
- 口腔ケア:舌苔を無理にこすり取らず、歯磨きやうがいで口内を清潔に保つ
- 心理的アプローチ:心因性が疑われる場合、カウンセリングや精神科の受診を検討
味覚障害は生活の質を大きく低下させるだけでなく、栄養バランスの崩れや健康状態の悪化につながる可能性があります。症状が続く場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診し、原因を特定して適切な治療を受けることが大切です。