咽喉頭異常感症
1.概要
咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)とは、のどや喉頭周辺に「何かが詰まっている」「異物がある」といった不快感や違和感があるにもかかわらず、内視鏡や画像検査などでははっきりした異常が見つからない状態を指します。ストレスや生活習慣、胃食道逆流症などさまざまな要因が関係しますが、まれに咽頭癌や食道癌が潜んでいる場合もあり、注意が必要です。特に食道癌は、喫煙や飲酒といった一般的なリスクがない女性にも起こるケースが報告されています。
2.症状
- のどの違和感・異物感:つかえた感じ、イガイガするなどの不快感
- 飲み込みづらさ:食物や唾液を飲み込む際に違和感が強まる場合がある
- 声のかすれ・せき:胃酸の逆流などでのどを刺激すると、声がかすれたり乾いたせきが出る
- 胸やけ・呑酸(どんさん):胃食道逆流症が原因の場合、胸のむかつきや酸っぱい液が上がってくる感覚を伴うことも
3.原因
- ストレスや精神的要因:緊張や不安がのどの筋肉をこわばらせる
- 胃食道逆流症(GERD):胃酸が食道やのどまで逆流し、粘膜を刺激することで違和感を生じる
- 咽頭がん・食道がん:のどの異常感が初期症状となることがある。喫煙や飲酒の有無にかかわらず、女性でも発症するケースがある
- 生活習慣:喫煙、アルコール、刺激物の多い食事、食べ過ぎ・飲み過ぎ、就寝前の飲食など
- 他の疾患:甲状腺の腫れや頸椎の変形、咽頭炎や鼻炎などの慢性的な炎症など
4.診断
- 問診・視診:症状の経過、生活習慣、ストレス状況などを詳しく確認
- 内視鏡検査:のどや食道を直接観察し、腫瘍や炎症などの器質的異常をチェック
- 画像検査(X線・CT・MRIなど):首や胸部を撮影し、甲状腺や食道、咽頭の構造的異常を確認
- 胃食道逆流症の評価:上部消化管内視鏡検査や24時間食道pHモニタリングなどを行い、逆流の有無を確認
- 悪性疾患の除外:疑わしい所見がある場合は、生検や追加検査を行い、咽頭癌・食道癌の可能性を排除
5.治療
- 生活習慣の改善:
- 刺激の強い食べ物や喫煙・飲酒を控える
- 就寝直前の飲食を避ける、枕元を高くするなど
- 薬物療法:
- 胃酸分泌抑制薬:プロトンポンプ阻害薬(PPI)などで胃酸の逆流を抑える
- 抗不安薬や漢方薬:ストレスや自律神経の乱れが原因の場合に症状緩和
- リラクゼーション・心理的アプローチ:カウンセリングやストレスマネジメントを行う
- 原因疾患の治療:咽頭癌・食道癌などが見つかった場合は、専門的な治療(手術・放射線・化学療法)を行う
のどの違和感や異物感が長引く場合、ストレスや逆流性食道炎だけでなく、癌の可能性も否定できません。早めに耳鼻咽喉科を受診し、必要な検査を受けて適切な治療を行うことが大切です。