痰に血が混じる
「痰に血が混じっている…」と気づいた時、多くの方が不安を感じるかと思います。痰に血が混じるという症状は、様々な原因で起こりうるため、自己判断せずに、まずは専門医を受診することが大切です。ここでは、痰に血が混じる原因や、対処法について詳しく解説します。
痰に血が混じる(血痰:けったん)とは?
血痰とは、咳や痰と一緒に、血液が混じって排出される状態を指します。血液の混ざり方や色、量によって、出血部位や原因をある程度推測することができます。
血痰の原因となる出血部位
口から排出される痰に血が混じる場合、以下の部位からの出血が考えられます。
- 鼻からの出血
- 鼻血がのどに流れ込み、痰と混ざって排出されることがあります。
- 補足:この場合、鼻をかむと鼻血が確認できることが多いです。
- 鼻血がのどに流れ込み、痰と混ざって排出されることがあります。
- 口の中からの出血
- 歯ぐきの炎症や出血、舌の傷などによって、口の中の血液が痰と混じって排出されることがあります。
- のどからの出血
- 咽頭や喉頭の炎症や腫瘍、外傷などによって出血し、痰に血が混じることがあります。
- 食道からの出血
- 食道炎、食道潰瘍、食道がんなど、食道の病気によって出血し、痰に血が混じることがあります。
- 呼吸器(気管、気管支、肺)からの出血
- 気管支炎、肺炎、肺結核、肺がんなど、呼吸器の病気によって出血し、痰に血が混じることがあります。
痰に血が混じる原因
痰に血が混じる原因は様々ですが、主な原因として以下のものが挙げられます。
1.耳鼻咽喉科領域の病気
- 鼻出血(鼻血):鼻の粘膜からの出血がのどに流れ込み、痰に血が混じることがあります。
- 咽頭炎・喉頭炎:のどや声帯が炎症を起こし、咳や痰とともに、少量の血が混じることがあります。
- 咽頭がん・喉頭がん:咽頭や喉頭にできる悪性腫瘍。初期には声のかすれやのどの違和感、進行すると血痰や嚥下困難などがみられます。
2.呼吸器系の病気
- 気管支炎:気管支の粘膜に炎症が起こり、咳や痰、発熱とともに、血痰が見られることがあります。
- 肺炎:肺に炎症が起こり、咳や痰、発熱、呼吸困難などの症状とともに、血痰が見られることがあります。
- 肺結核:結核菌が肺に感染して起こる病気。咳や痰、微熱、倦怠感、血痰などの症状が現れます。
- 肺がん:肺にできる悪性腫瘍。咳や痰、胸痛とともに、血痰が見られることがあります。
- 気管支拡張症:気管支が拡張し、炎症を繰り返す病気。慢性的な咳や痰とともに、血痰が見られることがあります。
- 肺塞栓症:肺の血管に血栓が詰まる病気。突然の胸痛や呼吸困難、血痰などの症状が現れます。
3.その他の原因
- 歯周病・歯肉炎:歯ぐきの炎症や出血によって、口の中の血液が痰に混じることがあります。
- 抗血栓薬の服用:血液をサラサラにする薬(抗凝固薬や抗血小板薬)を服用していると、出血しやすくなり、血痰が出やすくなることがあります。
- 心臓の病気:心不全などで肺に血液が溜まると、肺からの出血によって血痰が出ることがあります。
- 血管の病気:動脈瘤や血管炎など、血管の病気が原因で血痰が出ることがあります。
- 外傷:のどや胸部の外傷によって、血痰が出ることがあります。
血痰の色と特徴
血痰の色や特徴も、原因を特定する上で重要な情報となります。
- 鮮血:鮮やかな赤い色の血が混じっている場合、出血部位が比較的近い場所(鼻、口の中、のど、気管支など)である可能性が高いです。
- 暗赤色:暗い赤色や茶色の血が混じっている場合、出血してから時間が経っている、または肺など比較的奥の部位からの出血である可能性があります。
- ピンク色の痰:痰全体がピンク色になっている場合は、肺水腫など、肺からの出血が疑われます。
- 少量の血が混じる:痰に糸状や点状の血が混じる場合は、軽度の炎症や刺激による出血が考えられます。
- 大量の血が混じる:痰に大量の血が混じる場合は、肺がんや肺結核などの重篤な病気の可能性があります。
痰に血が混じる場合の検査と診断
痰に血が混じる場合、自己判断せずに、まずは医療機関(耳鼻咽喉科、呼吸器内科など)を受診し、原因を特定する必要があります。検査は、以下のようなものが行われます。
- 問診:いつから血痰が出始めたか、頻度、量、色、他の症状を伴うか、持病や服用中の薬はあるかなどを詳しくお聞きします。
- 聴診:呼吸音を聴診器で確認します。
- 視診:のどや鼻の状態を観察します。
- 血液検査:貧血の有無、炎症の程度、感染症の有無などを調べます。
- 喀痰検査:痰の中に細菌や結核菌、がん細胞などがいないか調べます。
- 胸部レントゲン検査:肺や心臓の状態を確認します。
- 胸部CT検査:より詳細な肺の状態を確認します。
- 気管支内視鏡検査:気管支の中を内視鏡で観察し、出血部位や異常がないかを確認します。
- 鼻咽腔内視鏡検査:鼻やのどの奥の状態を確認します。
痰に血が混じる場合の治療法
痰に血が混じる場合の治療法は、原因によって異なります。
1.耳鼻咽喉科領域の病気が原因の場合
- 鼻出血:出血部位を圧迫したり、止血剤を使用します。
- 咽頭炎・喉頭炎:炎症を抑える薬を使用します。
- 咽頭がん・喉頭がん:手術や放射線治療、化学療法などを行います。
2.呼吸器系の病気が原因の場合
- 気管支炎・肺炎:抗菌薬や抗ウイルス薬を使用します。
- 肺結核:複数の抗結核薬を長期間服用します。
- 肺がん:手術、放射線治療、化学療法などを行います。
- 気管支拡張症:症状を緩和するための薬や、感染を予防するための抗菌薬を使用します。
- 肺塞栓症:抗凝固薬や血栓を溶かす薬を使用します。
3.その他の原因の場合
- 歯周病・歯肉炎:歯科医で適切な治療を受けましょう。
- 抗血栓薬の服用:医師と相談し、薬の調整や服用の中止を検討します。
- 心臓の病気:心臓の専門医による適切な治療を行います。
- 血管の病気:血管の専門医による適切な治療を行います。
まとめ
痰に血が混じるという症状は、様々な病気のサインである可能性があります。耳鼻咽喉科では鼻血が出ていないか、口の中から出血していないか、のどの奥から出血していないか、また鼻・口・のどにがんがないかなどを中心に調べます。耳鼻科領域に何も異常がなければ、内科の先生に首から下を調べてもらうことになります。特に、大量の血が混じる場合や、発熱、胸痛、呼吸困難などの症状を伴う場合は、重篤な病気の可能性もあるため、すぐに医療機関を受診してください。早期に適切な診断と治療を受けることで、重症化を防ぎ、早期回復を目指すことができます。
(お困りの際は、当院までご相談ください。適切な対応をさせていただきます。)