めまい (良性発作性頭位めまい症、メニエール病など)
1.概要
めまいとは、自分や周囲が回っているように感じる「回転性のめまい」や、フラフラと揺れるように感じる「浮動性のめまい」など、平衡感覚が乱れる症状の総称です。耳の中にある内耳は平衡感覚を司る重要な器官であり、ここに障害が生じたり、脳など中枢神経に異常が生じたりすると、さまざまなタイプのめまいが起こります。めまいは単独で生じることもあれば、耳鳴や難聴などの聴覚症状を伴う場合や、手足のしびれなど神経症状を伴う場合もあります。2.症状
- 回転性めまい:周囲がぐるぐる回るように感じるタイプ。頭の位置を変えたときに数秒から数十秒続くものや、長時間続くものがあります。
- 浮動性めまい:体がフワフワと揺れるように感じ、まっすぐ歩きづらくなります。
- 耳の症状:難聴、耳鳴、耳のつまり感などを伴うことがあります。メニエール病が代表的です。
- 神経症状:脳の異常が原因の場合、意識障害、ことばの障害、手足のしびれ・麻痺、激しい頭痛などを伴うことがあります。
3.原因
めまいを起こす主な疾患・要因には以下のものがあります。メニエール病
難聴、耳鳴、耳のつまり感などの聴覚症状を伴うめまい発作を繰り返す疾患です。内耳のリンパ液が過剰になり(内リンパ水腫)、主にストレスなどが誘因となって症状が出ると考えられています。発作中は聴こえが悪くなりますが、発作が治まると回復することも多いものの、繰り返すうちに徐々に聴力が低下するケースもあります。良性発作性頭位めまい症(BPPV)
めまいの原因としてもっとも多い疾患です。特定の頭の位置や動き(寝返り、起床時など)で回転性めまいが数秒から数十秒起こりますが、難聴や耳鳴はほとんど伴いません。内耳の耳石(じせき)がはがれて半規管内を移動するためにめまいが生じます。中枢性めまい
脳疾患が原因で起こるめまいを指します。脳卒中(脳出血や脳梗塞)により、小脳や脳幹に障害が起こるとめまいが生じることがあります。意識障害や言語障害、手足のしびれ、激しい頭痛などを伴う場合は、ただちに脳神経内科や脳外科などでの精密検査が必要です。4.診断
めまいの診断では、以下のような検査や評価が行われます。
- 問診・診察:めまいの起こり方、持続時間、頭の動きとの関係、聴覚症状や神経症状の有無などを詳細に確認します。
- 聴力検査:メニエール病など内耳障害が疑われる場合に、難聴や耳鳴の程度を把握します。
- 眼振(がんしん)検査:めまい時の眼球の動きを確認し、内耳や脳の異常を推測します。
- 耳石置換法の誘発検査:良性発作性頭位めまい症が疑われる場合、頭位を変えてめまいを誘発し、はがれた耳石の部位を特定します。
- 画像検査(CT・MRIなど):中枢性(脳)の異常が疑われる場合に行い、脳出血や脳梗塞などを調べます。
5.治療
メニエール病
生活指導(ストレス管理や塩分制限など)や、内リンパ水腫を軽減させる薬物療法が中心です。治りにくい場合は手術や平衡機能訓練が検討されることもあります。良性発作性頭位めまい症(BPPV)
はがれた耳石を正しい位置に戻す「耳石置換(ちかん)法」によって、短期間で症状が改善することが多いです。中枢性めまい
原因となる脳の病変(脳卒中や腫瘍など)に対して脳神経内科や脳外科での治療が必要です。急性期には救急医療が求められる場合もあります。その他
めまいに伴う吐き気や嘔吐を軽減する薬、リハビリテーション(平衡機能訓練)などを組み合わせて症状をコントロールします。めまいには多くの原因があり、早めの受診と正確な診断が重要です。特に、意識障害や手足の麻痺など神経症状を伴う場合は、脳疾患の可能性もあるため、速やかに専門医の診察を受けてください。