1.概要
アデノイド(咽頭扁桃〈いんとうへんとう〉)とは、鼻の奥、のどの上部(上咽頭)にあるリンパ組織の一つです。これが慢性的な刺激や炎症などによって大きく肥大化した状態を「アデノイド増殖症(アデノイド肥大)」と呼びます。特に小児に多く見られ、鼻づまりや口呼吸などの原因となることがあります。
2.症状
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鼻づまり・口呼吸:鼻の奥が塞がれやすく、口呼吸になりやすい
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いびき・睡眠障害:就寝時に空気の通り道が狭くなるため、いびきや睡眠の質の低下が起こる
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中耳炎の反復:耳管(じかん)が圧迫されることで中耳炎を繰り返す場合がある
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鼻声(開鼻声):声が鼻の奥で響きづらくなり、特有の鼻声が目立つ
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集中力の低下:口呼吸や睡眠不足などにより、集中力や学習能力に影響を及ぼすこともある
3.原因
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感染や炎症の慢性化:風邪や鼻炎などの繰り返しによって咽頭扁桃が刺激され、肥大しやすくなる
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アレルギー:アレルギー性鼻炎やアトピー体質のある子どもは、より炎症が長引き、アデノイドが肥大しやすい
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遺伝的要素:家族にアデノイド増殖症がある場合、同様の症状が現れやすい
4.診断
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問診・視診:鼻づまりやいびき、口呼吸の有無を確認し、症状がどの程度生活に影響を与えているかを把握する
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内視鏡検査:鼻や口からファイバースコープを挿入し、アデノイドの大きさや咽頭内の状態を直接観察する
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画像検査:必要に応じてX線やCTなどを撮影し、アデノイドの肥大度や気道への影響を評価する
5.治療
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保存的治療(薬物療法):軽症の場合、鼻やのどの炎症を抑える点鼻薬や内服薬、抗アレルギー薬などを使用し、症状の改善を図ります。
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手術療法(アデノイド切除術):鼻づまりや睡眠障害、中耳炎の反復など重症・難治例では、肥大したアデノイドを切除する手術が検討されます。手術は全身麻酔下で行われることが多く、術後は経過観察が必要です。
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生活指導:アレルギー対策や定期的な鼻うがいなどで鼻やのどを清潔に保ち、感染や炎症のリスクを抑えます。
アデノイド増殖症は子どもに多く、鼻づまりや口呼吸によるQOL(生活の質)の低下を招くことがあります。気になる症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療法を検討することが大切です。