唾液腺疾患 (唾石症、唾液腺炎)
1.概要
唾液腺疾患(唾石症、唾液腺炎)とは、耳下腺・顎下腺・舌下腺などの大唾液腺や、口腔内に多数存在する小唾液腺に生じる病気の総称です。唾石症(だせきしょう)は唾液腺やその排泄管内に石ができる状態を指し、唾液腺炎は感染や自己免疫などの原因で唾液腺が炎症を起こす疾患です。これらの病気は、唾液の分泌障害や腫れ・痛みなどの症状を引き起こし、食事や日常生活に支障をきたす場合があります。
2.症状
- 唾石症
- 食事の際に唾液の分泌が増えるため、腫れや痛みが強くなる
- 腫脹(しゅちょう)や疼痛が続く場合、感染を合併すると膿が口腔内に排出されることも
- 唾液腺炎
- 耳下腺・顎下腺・舌下腺が腫れる、痛みを伴う
- 急性化膿性炎症では、膿が唾液とともに排出される
- シェーグレン症候群やIgG4関連唾液腺炎などの自己免疫性疾患では、口腔内の乾燥を伴うことが多い
3.原因
- 唾石症
- 唾液腺や排泄管内に石が形成され、唾液の流れを妨げる
- 顎下腺に最も多く発生するが、耳下腺や舌下腺にも生じる場合がある
- 唾液腺炎
- 感染:ウイルス(おたふくかぜ:流行性耳下腺炎)や細菌感染(急性化膿性耳下腺炎、急性顎下腺炎など)
- 自己免疫性:シェーグレン症候群、IgG4関連唾液腺炎など
- 排泄管の閉塞:唾石や炎症による腺内・管内の狭窄
4.診断
- 問診・視診・触診:腫れの場所、痛みの有無、食事時の症状などを確認
- 画像検査(エコー、CT、MRIなど):石の有無や唾液腺の形態を把握する
- 唾液腺造影:排泄管内の狭窄や石の位置をより正確に確認
- 血液検査:感染や自己免疫性疾患を疑う場合に炎症反応や特定の抗体を調べる
- 生検:必要に応じて唾液腺組織を採取し、病理検査を行う
5.治療
- 唾石症
- 自然排石:石が小さい場合、唾液の流れで自然に排出されることがある
- 手術:石の大きさや位置に応じて、口腔内から排泄管を切開する方法、皮膚を切開して唾液腺ごと摘出する方法、内視鏡を使って石を取り除く方法がある
- 唾液腺炎
- 薬物療法:抗生物質や抗ウイルス薬、痛み止め、ステロイドなどを用いる
- 自己免疫性疾患への対応:シェーグレン症候群やIgG4関連唾液腺炎の場合、免疫抑制薬やステロイド治療を検討
- 生活指導:口腔内を清潔に保ち、水分をこまめに摂取するなど、唾液の分泌を促すケア
耳の下や顎の下が腫れたり、口の中が乾く、唾液が出にくいなどの症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。