声がれ、嗄声(反回神経麻痺)
1.概要
声がれ、嗄声(させい)は、声を生み出す声帯の異常により、声の質が低下し、かすれたり出にくくなる状態を指します。特に反回神経麻痺が原因の場合、ウイルス感染や喉頭がん、下咽頭がん、甲状腺がん、肺がん、食道がんなどが関与することがあり、声帯の運動障害として発声障害が現れます。声の濫用や酷使も要因となる場合があります。
2.症状
- 声のかすれ・嗄声:声帯の動きが低下し、声がかすれるまたは弱くなる
- 発声困難:十分な声が出せず、発声中に声が途切れる
- 声の途切れや変化:連続した発声が難しく、声の質が不安定になる
- 場合によっては、痛みや違和感:声帯周辺の炎症が強いと、痛みや不快感を感じることもある
3.原因
- 反回神経麻痺:ウイルス感染や、喉頭がん、下咽頭がん、甲状腺がん、肺がん、食道がんなどが原因で、反回神経が麻痺し、声帯が正常に動かなくなる
- 声帯の構造異常:声帯ポリープや声帯結節など、良性病変がある場合も発声障害の原因となる
- 声の濫用・酷使:長時間の大声や過度な発声により、声帯に過大な負担がかかる
- 特殊な運動障害:けいれん性発声障害など、声帯がけいれんしてスムーズに動けなくなる状態
4.診断
- 問診・視診:発症の経過、生活習慣、職業歴などを詳しく確認し、症状の特徴を把握
- 喉頭内視鏡検査:内視鏡を用いて声帯の動きや病変の有無を直接観察し、反回神経の機能状態を評価
- 音声検査:発声の質、強度、持続時間などを計測し、定量的に評価する
- 画像検査(CT・MRIなど):神経や周囲組織の異常を確認し、がんなどの潜在的疾患の有無を除外する
- 追加検査:必要に応じて、血液検査や生検を行い、炎症やがんの初期症状を見逃さないようにする
5.治療
- 薬物療法:ウイルス感染が原因の場合は抗ウイルス薬、炎症や浮腫を抑えるためにステロイド薬を用いる
- 声帯リハビリテーション:専門の発声指導を受け、正しい発声方法や筋力の改善を図る
- 手術療法:
- 重症例では、反回神経麻痺の原因となる病変(がんなど)の治療や、声帯の補助的手術を行う
- 声帯ポリープや結節がある場合は、内視鏡下での切除やボトックス療法が検討される
- 生活習慣の改善:声の過度な使用を避け、十分な休養や栄養管理を心掛ける
なお、これらの症状は、がんの初期症状の可能性も否定できません。特に反回神経麻痺が原因の場合、喉頭がんや下咽頭がん、甲状腺がん、肺がん、食道がんなどのリスクがあるため、声がれや嗄声が1か月以上続く場合は、すぐに耳鼻咽喉科を受診し、適切な検査と治療を受けることが非常に重要です。