頸部リンパ節腫脹
1.概要
頸部リンパ節腫脹(くびのリンパ節が腫れる状態)は、炎症性疾患(ウイルス・細菌感染など)や腫瘍性疾患(悪性リンパ腫、他の部位からの転移など)が代表的な原因となります。急性リンパ節炎は発熱や痛みを伴い、比較的短期間で改善することが多い一方、結核性リンパ節炎や悪性腫瘍の場合は長期の治療が必要です。また、亜急性壊死性リンパ節炎やサルコイドーシス、伝染性単核球症など、他の疾患も潜んでいる可能性があるため、正確な診断と適切な治療が重要です。
2.症状
- リンパ節の腫れ・しこり:くびの一部が腫れる、触れるとしこりを感じる
- 痛みや圧痛:炎症性疾患(急性リンパ節炎など)では、押すと痛むことが多い
- 発熱・倦怠感:感染による場合、全身症状として熱やだるさを伴うことがある
- 慢性的な腫れ:結核性リンパ節炎や悪性リンパ腫などでは、痛みが少なく腫れが持続することが多い
3.原因
- 炎症性疾患
- 急性リンパ節炎:ウイルスや細菌感染によるもので、痛みや発熱を伴う
- 慢性リンパ節炎:結核性リンパ節炎など、特定の感染症により長期間腫れが続く
- 腫瘍性疾患
- 悪性リンパ腫:リンパ組織ががん化(肉腫化)したもので、頸部リンパ節が腫れることが多い
- リンパ節転移:他の臓器(口腔、咽頭、甲状腺、肺など)のがんがリンパ節に転移する場合
- その他
- 伝染性単核球症、亜急性壊死性リンパ節炎、サルコイドーシスなど、注意が必要な疾患が潜んでいることもある
4.診断
- 問診・視診・触診:リンパ節の腫れの部位、痛みの有無、発症時期などを詳しく確認
- 血液検査:炎症反応、感染症マーカー、腫瘍マーカーなどを調べる
- 画像検査(超音波、CT、MRIなど):リンパ節の大きさや内部構造、周囲臓器への影響を評価
- 細胞診・組織生検:リンパ節の一部を採取し、病理学的に良性・悪性を確定診断
- 追加検査:結核や特定の感染症、自己免疫疾患の疑いがある場合は、それぞれの専門検査を実施
5.治療
- 炎症性疾患
- 急性リンパ節炎:抗生物質や消炎鎮痛薬の内服により1~2週間程度で改善することが多い
- 結核性リンパ節炎:抗結核薬の長期服用が必要
- 腫瘍性疾患
- 悪性リンパ腫:腫瘍の広がりを評価し、抗がん剤治療、放射線治療、場合によっては手術などを組み合わせる
- リンパ節転移:もとのがん(原発巣)と合わせて手術、放射線、抗がん剤治療などを行う
- その他
- 伝染性単核球症、亜急性壊死性リンパ節炎、サルコイドーシスなどは、それぞれの疾患に応じた専門的治療を行う
頸部リンパ節が腫れたり、しこりや痛みが長引く場合は、自己判断せずに早めに耳鼻咽喉科を受診し、正確な診断を受けることが重要です。炎症によるものか、悪性腫瘍によるものかなど原因を特定し、適切な治療を行うことで早期改善や重症化の予防が期待できます。