鼻副鼻腔腫瘍(良性・悪性)
1.概要
鼻副鼻腔腫瘍(良性・悪性)とは、鼻腔や副鼻腔(上顎洞・篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞)に発生する腫瘍の総称です。良性腫瘍は周囲組織に浸潤せず、比較的ゆっくりと成長しますが、中でも頻度が高いのが「乳頭腫(にゅうとうしゅ)」です。乳頭腫はがん化の可能性があり、症状や場所によっては手術による切除が必要となります。一方、悪性腫瘍は周囲組織や骨へ浸潤・転移するリスクがあり、代表的なものに「上顎がん」が挙げられます。
2.症状
- 鼻づまり・鼻みず:片側に症状が偏る場合は要注意
- 鼻出血:悪臭のある鼻汁や血性分泌物がみられることも
- 顔面痛・歯痛:腫瘍が上顎洞や歯根付近に浸潤することで痛みが生じる
- 頬の腫れ・変形:進行すると顔面の腫れや変形が顕著になる場合がある
- 視力障害:眼窩付近に広がると、視力低下や眼球運動障害が起こる可能性
3.原因
- 慢性副鼻腔炎の長期放置:上顎がんなどの悪性化リスクを高める要因
- 慢性的な刺激:喫煙や大気汚染、化学物質などによる粘膜への持続的ダメージ
- 遺伝的要因・免疫力低下:体質や免疫機能の低下が、腫瘍発生や進行に影響
4.診断
- 耳鼻咽喉科での診察:鼻や口腔、顔面の視診・触診を行い、異常の有無を確認
- 内視鏡検査:鼻腔・副鼻腔内を直接観察し、腫瘍の存在や形態を把握
- 画像検査(CT・MRIなど):腫瘍の広がりや骨への浸潤状態、周囲組織との関係を評価
- 組織検査(生検):腫瘍の一部を採取し、良性・悪性の確定診断を行う
5.治療
良性腫瘍(乳頭腫など)
- 経過観察:症状が軽度で腫瘍が小さい場合は、定期検査で変化を追う
- 外科的切除:がん化の可能性がある乳頭腫や症状が強い場合は、手術で腫瘍を摘出
悪性腫瘍(上顎がんなど)
- 手術:腫瘍と周囲組織を切除し、必要に応じて再建手術を行う
- 放射線治療:腫瘍の増殖を抑え、手術と併用されることが多い
- 化学療法(抗がん剤):放射線との併用や再発予防として実施
片側の鼻づまりや顔面痛、鼻出血などが続く場合は、鼻副鼻腔腫瘍の可能性があります。早期に耳鼻咽喉科を受診し、適切な検査・治療を受けることで、機能障害や進行を最小限に抑えることが期待できます。